想定外の…2.14vv
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 


      


今時とか全国的にどうなのかを存じ上げないのですが、
私がその年頃だった、昔むかしの大昔(笑)は、
近畿、大阪では、丁度バレンタインデーの前後が 私立高校の入試日で、
その1カ月後のホワイトデー前後が 公立高校の入試日だったので。
中三の子らや、好きな人が受験生だという後輩さんたちにとっては、
何とも微妙な両日となったものですが。
ぴったりとその日じゃあなくっても、
大体どこででも その辺りといや、
高校・大学双方の受験に重なりかねない頃合い。
受験生たちには、
落ち着いて集中出来るようにと、
授業や登校がほとんど免除状態になってたりする一方で、
迎える側の学校でも、教室が試験会場になる関係から、
当日には土曜や日曜が選ばれていても、
担当職員の方々の打ち合わせなどの都合から、
その前後も臨時休校とされる場合が多く。

 「ウチは持ち上がり組が大半だそうですが。」

付属の学校といや、
幼稚舎に始まり、初等科に中等部に短大までと取り揃えられている、
こちら様の女学園へ。
そう言うご当人だって
外部からの途中入学組のひなげしさんが、

 「それだからでしょうか、
  狭き門なんですってよ、此処の入試。」

外気のあまりの冷たさにだろ、
あっと言う間に結露で曇った窓ガラスを、
小さな手のひらを当てて拭いつつ。
他人事のように口にしたのへ、

 「ええっ? そうだったの?」

そんなの知らなかったと。
やはりこの高等部へと外部入学して来たクチ、
今や 紛れもない“マドンナ”の一角を担う白百合さんが、
それは意外そうに口許を覆う。

 “まま、だからこそ退屈しなかろと思いもしたんですけれど。”

理系専攻、
退屈なハイスクールライフは願い下げだと思ってた平八には、
なかなかに打ってつけの歯ごたえだったらしいし、

 「神無中央高校。」
 「え? ええ、そうですよ。」

後ろの席から加わった、
こちらは持ち上がり組の紅バラさんが口にしたのは、
随分と省略されていたが、
七郎次がここの他にもという、
滑り止めに受験していた公立高校の名前。
そちらこそが本命だとして頑張る子の方が多いほど、
結構 難関の秀才校で、
某T大への合格者も、毎年のこととして多数 輩出しておいで。
だって言うのに、
そんなことさえ知らなんだ、草野さんチの七郎次お嬢様。
単なる内申評価からそこが妥当だと担任の先生から言われ、
それでと受験しただけの話で。
そっちへも余裕で合格していたものの、
本命はこちらの女学園だったのでと、
あっさり振ってしまった豪傑だったりし。
そこまでの秀才には、
此処の入試なんてちょろいと言いたかった久蔵さんもまた、
定期考査ではなかなかの席次を保っておいで。
きっちりとした答えの出せる、数学や物理が得意中の得意で、
それだけと教科を絞ればトップが定席という才女でもあり。

 『だってのに、何で古文がこれかなぁ。』

教科によってのばらつきがひどすぎる とは、
時々こっそり家庭教師もしてくれる、
某校医さんのお嘆き…なのもさておいて。

 「それでってワケでもありませんが、
  この3連休は構内全面立ち入り禁止となってましたし、
  二月いっぱいは三年のお姉様がたへのバックアップ、
  全部の先生がたが
  “どんな質問へもお答えします”態勢が優先されるとか。」

それでのことか、在校生の授業も、
短縮、いやさ たった3時限だけの授業になってしまうこちら様。

 「お姉様がたは大変なんですから、
  手放しで喜んでちゃいけないのでしょうが。」

それでもやっぱり…あのねのねvv
いよいよの当日が、だのに平日だったのにもかかわらず、
そうまで自由時間を長くもらえるなんてのは。
その学校に生活時間を縛られている、
真面目でいい子の学生にとって、有り難いこと この上もなかったりし。

 「ヘイさんはお家へ帰るだけなの?」
 「はい?」
 「だから。お店が引けてからどっかへ出掛けるとか。」
 「う〜ん、どうでしょうねぇ。」

お持ち返りの甘味への予約も、結構ありましたから。
それを受け取りに来るお客様次第、
何にも予定は聞いてませんしと。
窓の桟の部分に後ろ手ついて、さてねぇと小首を傾げたひなげしさん、

 「久蔵も、せんせえの診療時間待ちなんでしょう?」

前後へ2つ並んだ格好の、金髪頭の片やへと訊けば、

 「〜〜〜〜。///////」
 「はっきりしませんね、珍しい。」
 「…あ・まさか、せんせえがお出掛けするとか?」

往診の予定が入ってるとか?と、
七郎次がガバッと振り返って来て訊いたのへは、

 「〜〜〜〜。(否、否、否)」

それはないないと大慌て、
両手を前へ突き出しながらかぶりを振った久蔵であり。
そうそれならいんだけどと、
胸元押さえて吐息つく、すっかり保護者の白百合様だったれど。

 「間違いなく平日なのに、
  大人たちの予定って案外と判んないもんですよね。」

ウチの八百萬屋も榊医院も、
営業時間とか診療時間とかって看板に出してるほどなのに、
それでも予断を許さないのが当たり前なんですものねと。
肩を竦めて苦笑をし、

 「てなもんだから。
  あの勘兵衛殿の取っ捕まえられなさも、
  さほど特別なことじゃあないのかも知れませんね。」

 「いやいや、そんな極端なひとくくりをしてどうしますか。」

選りにも選って、
当事者の七郎次がとんでもないないとかぶりを振った、
なかなかに珍妙な会話を交わしてござった彼女らだったのも、
今日は特別な日だったからに他ならず。

 「まあともかく、
  どんな首尾となったかは明日報告し合うってことで。」

窓のお外は、
記録的寒波を上書きしたいかのような、
勢いも強気な雪催いの様相であるにもかかわらず。
お元気な女子高生の、白百合さんたちにおかれましては、
今日はいよいよの大事な計画の実行日。
降雪なんぞに負けてたまるかとの意気込みもありありと、
大きくしっかり頷き合って、
それじゃあと帰宅の途についたお昼前でございまし。
さぁて、一体どんな2月14日となりますことなやら…。


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